スクウェア・エニックスの祖堅正慶氏を中心とする、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)のオフィシャルロックバンド、THE PRIMALSの初のライブツアー“THE PRIMALS Zepp Tour 2018 -Trial By Shadow-”がいよいよ開幕。チケットが完売し、満員となったZepp ダイバーシティ東京で、同バンドが選りすぐりの全20曲を披露した。
THE PRIMALSは、世界各地で催された『FFXIV』の大規模ファンフェスティバルで、本作のBGMのロックアレンジ版を生演奏して大好評を博したことで知られる。2018年5月16日にはファーストアルバム『THE PRIMALS』をリリースし、メジャーデビューを果たしたばかりの彼らが単独公演を開催するとあって、大勢のファンが会場に集結。迫力満点のナンバーに酔いしれた。
本記事では、『FFXIV』の古株担当記者が体験した、THE PRIMALSのライブステージの楽しさをリポート。本記事を読めば、昨年開催された交響組曲エオルゼアとはまた趣の異なる、THE PRIMALSならではの公演の醍醐味がわかるはずだ。なお、他会場でのライブがまだ残っているので、今回はあえてセットリスト(曲順)は掲載しないことにした。
また、場内や出演者の写真は、一部を除いてスクウェア・エニックスから提供を受けた公式のものを掲載している。このため、一部キャプションの記述と実際の写真が食い違っている部分もあるが、なにとぞご容赦いただきたい。
公式写真:
Takanori Tsukiji
Junichiro "ZUN" Ootani
人気フレーズをみんなで合唱するのが楽しい!
オーディエンスが入場を終えた会場は、すでに驚くほどの熱気。開演をいまや遅しと待っていると、コンテンツファインダーの“シャキーン!”という耳慣れた音が鳴り響き、いよいよコンサートが開幕! 大迷宮バハムート:邂逅編4層のBGM『雷鳴』とともに、アシエンの黒装束をまとった4人のメンバーがステージに登場し、この日の公演がスタートした。
この日に演奏された全20曲のうち、ライブならではの魅力がストレートに楽しめたのは、『ローカス 〜機工城アレキサンダー:天動編〜』や『魔神 〜魔神セフィロト討滅戦〜』に代表される、男性ボーカル入りの楽曲。THE PRIMALSの顔ともいうべき祖堅氏と、本作のローカライズディレクターを務めるマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏の歌声に合わせ、演奏者と聴衆が一体となって盛り上がることができた。
ライブなので当然のことかもしれないが、曲を象徴するフレーズに合わせてみんなで声を上げるのが格別に楽しい。たとえば、『混沌の渦動 〜蛮神リヴァイアサン討滅戦〜』が始まると「リヴァイアサーン! リヴァイアサーン!」と叫べるし、『ライズ 〜機工城アレキサンダー:天動編〜』のサビの部分では、みんなで「Rise with me! Rise Up!」と合唱できる。いままで電車の中でイヤホンを着けながら、心の中で絶叫していたフレーズを全力で、しかも周囲の人たちとともに口ずさめる……この快感と一体感は、交響組曲エオルゼアにはない、THE PRIMALSのライブならではの魅力だ。
ライブに参加すべきかどうか悩んでいる読者の中には、叫びたくてもフレーズがわからないという方もおられるはずだが、そんな心配はまったくいらない。歌詞を知らずとも声を上げるだけで楽しいし、何よりも周囲の人たちの掛け声が自然と耳に届くので、必要なフレーズがたいていその場でわかる。
もしそれができなくても、たとえば『過重圧殺! 〜蛮神タイタン討滅戦〜』で“Bow down overweller!”の歌詞がわからないなら、それこそ聴こえるままに“耳コピ”で叫べばいい。要は、楽曲や英語に関する知識の量が、ライブの楽しさを左右するなんてことはないのだ。不安に駆られて尻込みするあまり、せっかくのチャンスを逃してしまうほうが、よほどもったいない!
また、人前で声を上げることに気恥ずかしさを覚える人もいるだろう。筆者もそのひとりであるどころか、そもそもライブというものに参加すること自体、今回が初めてだった。確かに私も最初は若干遠慮気味だったが、近隣の聴衆のテンションに圧されると自身のボルテージも自然と上昇。最終的に、思う存分ステージの興奮が味わえた。
とはいうものの、THE PRIMALSの演奏を心静かに堪能したいという人もきっといるはず。そういう方は、ステージから若干離れた場所に移動すればオーケー。聴衆が放つ“圧”みたいな空気感はステージから遠ざかるほどマイルドになっていくので、自分にふさわしい“立ち位置”を探ればいい。会場のZeppはハイクオリティーな音響環境を実現する施設なので、スタジアムライブなどとは違い、聞く場所によって音の聞こえかたが極端に変わるようなこともない。ライブは、自分の好みにふさわしい楽しみかたができるタイプのエンターテインメント……このことを、筆者は今回の取材を通じて十分に理解できた。