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2013年12月4日(水)

『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』超大型アップデート・パッチ2.1目前! これまでの軌跡と今後の展望を吉田直樹氏にインタビュー

文:ほっちゃん♂

 サービス開始から多くのプレイヤーがエオルゼアの大地に降り立ち、有効アカウント登録数が150万突破という大ヒットを記録しているスクウェア・エニックスのPS4/PS3/PC用MMORPG『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』(以下、『新生FFXIV』)。今回、ローンチから3カ月を経過した心境と、目前に迫る超大型アップデートのパッチ2.1『覚醒せし者たち』について、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にお話を伺った。

『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』
▲『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏。

■大ヒットを受けても『新生FFXIV』はまだスタートラインに立っただけ

『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』

――まず、ローンチを迎えてから3カ月が経過した、今のお気持ちをお聞かせください。

 最初の2週間は予想を上回るご好評をいただき、サーバーが足りない状況が続いてしまいご迷惑をおかけして申し訳ありません。怒涛の対応とパッチ2.1の開発追い込みで「正式サービスしてから、まだ、たったの3カ月か……」というのが開発チームの心境ですね。もともとは11月中にパッチ2.1が配信される予定でしたが、現状だと約4週間遅れてしまっています。幸い、12月17日にリリースと発表したら、プレイヤーの皆さんからは「意外と早い」という反応をいただいたので、少しホッとしています。

――アカウント登録者数が150万人を突破したとのアナウンスがありましたが、これだけの人数が課金をしているのは吉田さんの想定内ですか?

 もうちょっと少なくてもおかしくないかなと思っていました。ひと昔前はMMORPGに選択肢があまりなかったので、購入したお客様のほとんどが課金をしてくださっていたイメージです。最近のMMORPGの一般的なデータだと、月額課金を続けてくださる方の割合は、パッケージ購入者の30~35%くらいなんです。1人あたりのリテンション期間がどんどん短くなる傾向にありますし、それを踏まえると上に跳ねたほうですね。

 もともと『FF』シリーズのロイヤル・ユーザーの方が多く、月額課金制のゲームという認識のうえで購入されている方が比率的に多いと思うので、ここから会員数を増やすのであればひたすらパッケージを販売し、新規のお客様を入れていくしかないと考えています。もちろん復帰者を軽んじるつもりもないので、パッチ2.1リリース後も、パッケージをご購入いただいた方へのPRは手厚くやろうとは思っています。

――日本向けのMMORPGではベテランリワードのようなものがなかったので新鮮だと思いました。

 月額課金制は長く契約していただいたほうが収益的には安定するので、長期契約をしていただいているお客様にはその分だけメリットをお返ししたいというストレートな施策です。これからも『新生FFXIV』をコアに応援してくださる方には、いろいろなリワードを僕たちからの感謝という形で提示させていただきたいですね。

――ゲームについて日本と海外で盛り上がり方が違う部分はありますか?

 そこは欧米というよりMMORPGを知っている人と、初めてプレイする人で明確に違います。なおかつ最近のグローバルスタンダードのMMORPGを長期間プレイしてきた人たちと、『ファイナルファンタジーXI』を中心としたコミュニティとでも、盛り上がりのポイントは違います。わかりやすい例だと、コンテンツファインダーは『World of Warcraft (以下、WoW)』をプレイしていた人からすると馴染みのある仕組みなんですが、知らなければ便利すぎて、コミュニティが作れないのではないかと不安に感じた方もいらっしゃいました。

 また、逆に欧米のプレイヤーはコンテンツファインダーに対して「はぜ投票キック機能がないんだ」と言う方も多いです。彼らは『WoW』で嫌がらせをする人やコンテンツに見合った装備じゃない人をたくさん見てきて、そういったプレイヤーをドライにキックする文化が普通になっています。しかし、最初から実装すると「なぜキックが必要なのか? 悪用されるばかりじゃないのか?」という意見も出ると思います。

 馴染みのない人たちには、コンテンツファインダーがあまりに便利すぎて、嫌がらせをする人たちが出るとは事前に想像がつきません。その状態でキック機能があったら「自分が嫌いなプレイヤーをバンバンキックすればいいんだよね」となってしまう可能性もありました。キック機能のようなものは、ある程度使い込まれて、使っているお客様のニーズがあるからこそ入れるべきものであって、あまりにニーズを予測しすぎても、感覚がついてこない可能性があります。このようにプレイヤーの皆さんのMMORPG経験差で、入れる要素、入れない要素をコントロールした部分はあります。

『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』
▲コンテンツファインダーとは複数のワールドにいるプレイヤーからパーティを構成し、コンテンツへ挑戦できる機能。

――アイテムレベル制限はどのラインのコンテンツから適応されるのでしょうか?

 メインシナリオには入らないので、それ以降のものが対象ですね。実はアイテムレベル制限も、最初から導入しようとしたのをパッチ2.1からと指示を出した要素の1つです。かなりギリギリまで悩んだのですが……。これも実際に経験してからでないと必要性に気づきにくい部分で、たぶん最初から入っていたら“何もかも制限だらけのゲーム”という雰囲気になってしまわないかなと。アイテムレベル制限の必要性に気づいた方たちがコミュニティの中にいて、そのことを新規の人に教えてあげられる状態になるのがベストなんじゃないかと。

 悩んだ挙句、なんでも先回りして機能を入れることが、必ずしもいいことじゃなくて、なぜそれが必要なのかを体験してもらったほうがいいと判断しました。自分でも「遠回りなことをしているなあ」という自覚はあるんですが、最近のMMORPGがあまりにもゲーム慣れしている人向けになりすぎていると思っていて。現在、中国版の対応に向けての作業も行っていますが「クエストアイコンをクリックしてNPCのところまでワープしてほしい」とか「メッセージウィンドウにスキップのボタンを加えてほしい」という要望が出ることがあります。ただ、それを入れちゃうと「RPGってなんだっけ?」と思ってしまうんです……。

――そこまで便利になってしまうと、ゲームだからこそ味わえるおもしろ味がなくなりそうですね。

 そうですねえ。当然、その機能があれば便利なので、きっと皆さん使いますし、周りの人もそうしてプレイしているから、普通のことだと思ってしまう。でも、それだと初めてMMORPGをやる人が、ショックを受けるんじゃないかと。自分が古いだけなんじゃないかと、今でも毎度悩んでます(苦笑)。僕は、MMORPG慣れした人たちをあまりに意識しすぎ、MMORPGがゲームとしてあまりにも簡略化されるあまり、結果ゲームであることから離れつつあるような気がしています。新しく入った人にまずゲームをおもしろいと思ってもらい、その先に便利さがあるのは構わないんですが……。

――サービス前からMMORPGの間口を広げたいと仰っていましたが、『新生FFXIV』はそういう意味で成功したと感じられますか?

 いえ、まだまだです。MMORPGの場合、ローンチして課金が始まると、ユーザーの大きな増加の波は止まって、あとはその数字が維持されるか、緩やかに右肩下がりとなり、パッチやエクスパンションで取り戻す、というのが皆さんのイメージかもしれません。ですが『新生FFXIV』は毎月まだ10万人近くのプレイヤーが新規で入ってきてくれていますし、まもなくSteamの対応も始まるので、欧米ではさらに新規プレイヤーが大幅に増えます。今後はPS4版や、世界最大のオンラインゲーム市場である中国でのローンチに加え、台湾、韓国、ロシアからも引き合いをいただいているので、まだまだ本当にスタートラインに立っただけ、という感じです。

→次からいよいよパッチ2.1の内容に迫る!(2ページ目へ)

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ILLUSTRATION: (C)2013 YOSHITAKA AMANO

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