『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の2018年最初の大型アップデート“パッチ4.2 暁光の刻”が、いよいよ1月30日に公開される。ドマを舞台に展開されるメインクエストや、新規レイドダンジョンの次元の狭間オメガ:シグマ編など、いままでにない魅力を秘めたコンテンツが多数お目見えするのだ。そうした一連の新要素の見どころを、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに直撃。1時間を超えるインタビューの模様を、あますことなくお届けしよう。

 なおインタビューに先立ち、取材班は完成直前のトレーラームービーを視聴させてもらっている。吉田氏とのやりとりの中でたびたび映像に関する話題が登場するが、これらはあくまでも制作途上のものを前提としており、現在公開されているムービーと中身が異なる場合がある。あらかじめご了承願いたい。

吉田直樹(よしだなおき)

『ファイナルファンタジーXIV』プロデューサー兼ディレクター。

“ドマ編”はパッチ4.2と4.3の二部構成

──あけましておめでとうございます。

吉田 今年もよろしくお願いします。

──パッチタイトルに“暁”の文字が含まれますが、今回は暁の血盟のメンバーがストーリーのカギを握るのでしょうか?

吉田 パッチ4.2と4.3は、“ドマ編”の前編と後編という位置づけになっています。じつは、パッチ4.2の日本語版のタイトルの選定にすごく迷ってしまって。“新しい夜明け”という全体のテーマがすんなり決まっていたこともあり、英語版のタイトルは「RiseとSunを使おう」という感じでスムーズに話が進んだのですが……。

──どのへんが悩みどころだったのですか?

吉田 パッチ4.2と4.3のタイトルが対になるようにしたかったんです。ところが、パッチ4.2の日本語版の題名案に“これだ!”とすぐ決められるものがなく、けっこう迷いました。“新しい夜明け”をイメージしてもらうために暁という単語を入れた、というのがシンプルな回答になります。ですので、暁の血盟のメンバーが勢ぞろいするのかといえば、必ずしもそうではありません。

極白虎征魂戦の報酬は武器! 『FFXIV』パッチ4.2吉田氏インタビュー_01
極白虎征魂戦の報酬は武器! 『FFXIV』パッチ4.2吉田氏インタビュー_02
今回のメインシナリオで、暁の血盟のアルフィノはどのような役回りを演じることになるのだろうか。

──暁の血盟というよりも、“新しい夜明け”のほうに焦点が当たると。

吉田 はい。東方の“新しい夜明け”に向かって、人々が動き出すといったところがいちばん大きいです。あとは『FFXIV』全体としても、今回はシステム面に大きなアップデートがたくさん入りますし、2018年最初の大型パッチという意味合いもあります。いろいろなものが“新しい夜明け”を迎える……そんな感じをタイトルに込めました。

──パッチ4.3のタイトルも、ドマ編を連想させるものになるのでしょうか?

吉田 なんとなく、パッチ4.2と対になるんだろうな、と思っていただければと。

──たとえば明と暗のような……?

吉田 そうですね。

──ロゴのデザインも、前回から大きく変わっています。

吉田 ロゴに関しては、皆川(皆川裕史氏。アートディレクター)から「最近はブロックが多くてだいぶ飽きてきたので、ちょっと……」という申し出がありまして(笑)。

──そうだったんですか(笑)。

吉田 「デザイナーぽくレイアウトしてもいい?」と聞かれたので、「どんどんやっちゃって」と応じました。メインビジュアルに関しては、パッチ4.1で吉田明彦さんにデザインを依頼したことにより、新たな流れもできたと思っています。その流れを受けて今回は、ゲストクリーエータ―に決めたのがあったのと、次元の狭間オメガの第2弾が公開されることもあり、板鼻(板鼻利幸氏)にメインビジュアルをお願いした感じです。(『チョコボの不思議のダンジョン』シリーズを手掛けてきた)板鼻が描くのであれば、やはりアルファ君がいるべきだろうということで、今回の形になりました。

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板鼻氏が手掛けたパッチ4.2のメインビジュアルがこちら。

──なるほど。

吉田 メインビジュアルを見ていただければわかる通り、アルファ君はガーロンド・アイアンワークスの制服を着ています。“彼もスタッフの一員になるのかな?”みたいな雰囲気を漂わせたかったので、「戦隊ヒーローもののドラマみたいに、彼らにカッコよくフォーカスが当たるようなアートにしたい」と話をしたうえで作ってもらいました。すると皆川が、そのメインビジュアルにロゴをカンペキにはめ込んでくれて……。まるで最初からそこにロゴがあったかのように、ピッタリと。あの人は本当にすごいなと思います。

──今回はメインビジュアルが先にあって、それに合うロゴを後から作ったのですね。

吉田 そうです。

──板鼻さんにお願いするに当たって、吉田さんから何かイメージを伝えられたのですか?

吉田 「ウェッジとアルファ君はコンビにしてほしい。あとはジェシーも入れてね」と伝えました。また、ネロは立ち位置的にシドの隣から離れる気がしないので、彼らには並んでもらっています。

──ネロがすごく印象的です。

吉田 “お前は溶け込み過ぎじゃないのか”とプレイヤーに思ってほしいので、そう感じられるようにお願いして描いてもらいました。じつは当初のアイデアでは、戦隊ヒーローもののドラマにあるような、手前から奥に向かってキャラクターが順番に並んでいる……そんなイメージだったんです。そうしたイメージを伝えたうえで、板鼻にラフ絵の案をいくつか描いてもらい、その中から選んだ形です。

──ラフ絵をご覧になって、吉田さんはどう思われましたか?

吉田 素晴らしかったです。これほどの出来栄えの絵を、ラフと呼んでしまっていいものかと(笑)。

──今回のメインビジュアルの最大の謎は、いちばん上に描かれている戦闘シーンにあるかと思います。この部分を読み解くヒントをいただけますか?

吉田 僕は発注の段階で、「光の戦士たちを登場させてほしい」とは指定していません。あれはたぶん、ガーロンド・アイアンワークスは、その先にあるオメガとの激闘をサポートするチームというイメージで描いたのだと思います。

──といいますと?

吉田 光の戦士たちがオメガと激闘を演じていて、それらをサポートするチームの側にカメラの視点が置かれているという意味だと思います。

──今回のメインビジュアルを拝見して以降、この場所に光の戦士たちが描かれている意味をずっと考えていました。

吉田 パッチ4.2に登場するボスの情報は、板鼻にも渡していません。ですので、そこを深読みしてもたぶんダメだと思います(苦笑)。

──承知しました(笑)。今回はビッグスではなく、どちらかといえばウェッジにスポットライトが当たるのでしょうか?

吉田 ストーリー的な意味を込めて、話したわけではありません。機工城アレキサンダーの当時もそうでしたが、ウェッジは誰に対してもフラットな目線を持っている人物です。たとえそれが人間ではなく機械であっても……そこが彼のすごくいいところ。アルファ君に対して「コイツだって仲間ッス」と最初に言ったのも、じつはウェッジだったりします。コンビを組ませるのであればあのふたりが適任だという感じで……どちらかといえば、キャラクター付けの意味合いのほうが強いです。

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──ウェッジとアルファって、意思の疎通は図れるのでしょうか(笑)。

吉田 ウェッジならば、アルファ君の言っていることが何となくわかっていそうですね。それがいいんです(笑)。

──そうでなければ、ミドガルズオルムが登場していちいち解説を加えていくことになりそうです(笑)。

吉田 ミドガルズオルムにも見せ場がありますので、ぜひご注目ください。

“恐怖の象徴”がドマに再度現れる!?

──パッチ4.2のトレーラームービーは、ゴウセツとヨツユに焦点が当たっていました。今回のメインシナリオは、彼らを中心に展開するのでしょうか?

吉田 パッチ4.1では、独立戦争後のアラミゴで生じた混乱の模様が語られました。国が奪われた様子をリアルタイムで目の当たりにした世代と、その後に生まれた世代……同じアラミゴ人でありながら、立場が違う人たちが両勢力に分かれて戦わねばならなかった。その後、アラミゴ人たちは祖国の支配権を取り戻したとはいえ、当然ながら彼らがすぐにひとつになれるわけではありません。その部分をそれぞれの面から描いたのが、前回のメインクエストでした。

──とても考えさせられる物語でした。

吉田 一方でドマの場合は、強大なゼノスという存在があったにせよ、彼と対峙した人物はほとんどが斬り殺されているので、ゼノスという人物はイマイチ実像がつかめない、というのがドマの人々の感覚だと思います(苦笑)。

──(笑)。

吉田 ですので、ガレマール帝国そのものというよりも、どちらかといえば代理総督として悪逆の限りを尽くしてきたヨツユのほうが、ドマの人々にとって恐怖の象徴になるはず。ところが、その彼女が記憶を失っている、“ふう”で……。

──やはり“ふう”なんですね(笑)。

吉田 それは僕からは何も言えないので、メインクエストをプレイして、自分なりの答えを考えてみてください。「罪から逃れるための演技だろう」と言う方ももちろんいるでしょうが、いずれにせよ、奪還された国に悪逆の象徴が戻ってきたらどうなるだろう……というのがポイントになってくるのではないかなと。

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ヨツユを保護しているようにも見えるゴウセツ。彼の狙いは……?

──ガレマール帝国が、敗軍の将であるヨツユを許すとも思えません。

吉田 アラミゴはエオルゼアの4つの都市のすぐそばにあるので、同盟軍が強力に守りを固めています。それに対してドマは非常に小さな地域であるうえに、同盟軍の支援が直接届く距離でもありません。そんなかつての属州に対して、ガレマール帝国がどういう行動を示してくるのかというのも見どころのひとつです。

──ドマはアラミゴよりも、帝国の勢力が入り込みやすい状況にあると。

吉田 そうです。戦災からの復興を目指す人たちの前に、支配の象徴たる“恐怖”が帰ってくるかもしれない……。祖国を奪還したとはいえ、帝国がすべての戦力を現地に投入した場合、いまの平和が即座に瓦解しても不思議はありません。かつて支配していた側の帝国が、ドマにどのようなアプローチをしてくるのかといったところもポイントになります。

──今後の展開がすごく楽しみです。

吉田 単純なスタンドアローンのゲームであれば、『紅蓮のリベレータ―』で大団円を迎えた時点で終わりでもいいのかもしれませんが、『FFXIV』の場合はその後をしっかり描くことを目標にしています。だからこそ、ドマ編はどうしても複雑になるため、前編・後編のふたつに分かれています。今回は、パッチ4.1の展開よりもさらに静かに感じられるかもしれません。

──たしかにトレーラームービーを拝見した限りでは、帝国軍が大規模な軍事行動を起こすような印象を受けませんでした。

吉田 武力というよりは、言葉のバトルのほうが強いです。

──メインクエストの映像に関連して、魔列車が舞台のバトルシーンも登場していました。

吉田 うーん、いろいろご想像ください(苦笑)。

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──いわゆる余輩さん(マグナイ)をはじめとする、アジムステップの面々も活躍するのでしょうか?

吉田 今回はあくまでもドマのお話なので、物語には関係してきません。

──何らかのバトルに関連して登場することも……?

吉田 ないです。今回はあくまでもドマに終始しています。

──今回は復興もテーマのひとつになるかと思うのですが、たとえばイディルシャイアのように、街の見た目が変わる要素がドマの側にも入ってくるのでしょうか?

吉田 イディルシャイアが持つ機能は、すべてラールガーズリーチに渡してあります。ただし、ドマ町人地の復興がパッチ4.2からスタートします。

──おお!

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帝国の攻撃により廃墟と化した、ドマ町人地。かつて大いににぎわったこの市街地の復興が本格的に始まるのだ。

吉田 パッチが進むにつれて風景が自然と変わることもあり、どちらかといえばイディルシャイアとモードゥナは“受動的な復興”というイメージをお持ちかと思います。今回の復興は、プレイヤーがある程度そこに介入できるようにしました。パッチ4.2の時点ではまだ導入部分ではありますが、固有のストーリーが用意されていますので、ぜひそちらをしっかりと観ておいてください。エオルゼア側に避難している人たちとも話が通じるようになっていますので、そちらも訪れていただければと。

──メインストーリーの一環として進行するのですか?

吉田 別のサイドストーリーにしてあります。ちなみに、プレイヤーが介入できる新しいシステム自体は、そのつぎのパッチ4.3にて実装予定です。

──ワールドごとに街の見た目や状況が変わるのでしょうか?

吉田 いいえ。個人ごとにある程度の差異が出ます。

──街づくりが楽しめるイメージですか?

吉田 あまりに大掛かりなものを期待されるとちょっと困りますが、自分ならではの遊びかたはできるかと思います。